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「commmons:schola 音楽の学校」公開講座

2010年4月17日(土)、新宿紀伊国屋サザンシアターにて、坂本龍一氏と早大の小沼(こぬま)純一教授による公開講座を受講してきました。

ノートをもとに再構成したものなので、言い回し等まで厳密に再現していません。聞き間違い、勘違いもあるかと思いますので、お気づきの際はご指摘いただければ幸いです。

ステージ上、客席から見て右側に坂本教授。教授の前にはノートパソコン、横にキーボード。左側が小沼教授、その傍らにOHP。(当日の写真はcommmons スタッフ・ブログにアップされています。)以下、敬称略。【】の見出しは私が勝手に付けました。

【音楽の歴史を知ることの意義】
坂本:スコラとはラテン語で「学校」という意味。どちらかというと「煩瑣で堅苦しい」と悪い意味で使われることが多いが、スコラシリーズではそうではないものを目指している。
小沼:高橋悠治さんへのインタビューで何故音楽の歴史を知らなければならないかという問いに対し、「知っていれば使わないでいられる」との回答があった。ポストモダンなどを経て現在は歴史認識が失われている。ネットなどで簡単に情報が手に入るが、自分の好きなものだけに詳しい「知識のタコツボ化」がおきているのではないか。自分で判断する耳を養いたい。
坂本:フランスのCDボックスセット 2000年の音楽の歴史
   およそ2000年の音楽の歴史がある。
   僕の作曲も95%が歴史の積み重ねからきたもので、5%が自分のオリジナルではないか。
自分のオリジナルだと思って作った作品でも、過去に既にやられている可能性がある。
   それを知らないでいるのは恥ずかしいこと。

【音律について】
坂本:ラ(A1)の周波数が440HZ、1オクターブ上のラ(A2)が880HZ。現在使われている平均律は、オクターブを12分割している。これはとても粗い分割の仕方。他の生物や地球外生命体は違う精度で音を聞き分けているかもしれない。
小沼:<OHPに純正律の図>
   このようにオクターブを分割する方法もかつてはあった
坂本:歴史的にオクターブの発見、5度の発見は大きい cf.レヴィ=ストロース

【原初の音楽】
坂本:鹿の骨に穴を開けた笛
   石笛(いわぶえ)→自然に開いていた穴 海の神に捧げる音楽など
   口琴(こうきん)→あまり大きな音が出ない どちらかというと自分のための音楽に使われることが多かった
小沼:竹笛など長さで音の高さを調節したものも ピグミー族の音楽など
坂本:音の紹介
   ♪中央アフリカ バンダ族 笛の音楽 (複数の笛の音が絡み合い、リズミカル)
   もう少し複雑な例
   ♪打楽器、笛数種による民族音楽
   素朴に聞こえるかもしれないが、もうすでにかなり複雑で緻密な音楽になっていると言える
   このような音楽は西洋では「遅れた音楽」と見做されていたが、後にスティーヴ・ライヒやテリー・ライリーなどに改めて発見される
   ♪ライヒ『ピアノ・フェイズ』Piano Phase (1967)
    (ミニマルな音の連続、途中で位相がズレて重なっていく)
小沼:原始的な音楽からずいぶん時代が飛びましたね(笑)
   かつて「劣った音楽」と認識されていたものが19、20世紀の文化人類学によって再評価
   以前英語の音楽は単数の"music"しかなかったが、複数形としての"musics"が1950年代に認められた。
坂本:時代の流れは直線ではなく行ったりきたりしている。
   『のだめ』の影響で19世紀音楽がブームになったりしているが、あんなのは退行である!といいつつ、結構はまって読んでいる(笑)

【バッハの重要性】
小沼:なぜバッハが大切か。現在の音楽の原点の全てがそこにあると言っていい。
坂本:ロックにもヨーロッパの伝統音楽の流れが繋がっている。
   <キーボードでコードを弾きながら>
   ただ、例えばストーンズなどが多用するこういう逆進行などはバッハにはあまりなかった。
   ゴスペルなどもかなりバッハ的な進行が多い。まあ、こういう無いものもありますが…<弾いてみる>
   それでもやはり、現代の我々が耳慣れている音楽の基礎はほぼバッハにあると言える。

   バッハは1750年没。古典派が台頭してきても、古い音楽に固執した頑固な人物
   しかし、古典派のモーツァルトも晩年バッハ的要素を取り入れた曲を書いたりしている。どうやってバッハの曲を知ったのか不明。楽譜を取り寄せたのか?
   ベートーベンも晩年にバッハ的対位法を取り入れたりしている。

【音楽のパラダイムシフト】
小沼:和音ひとつだけでは音楽は成立しない
   音のつながりの規則があり、それがくずれたり変化したりして現代へ
坂本:西洋音楽の規則形成には教会が大きな権威を持っていた
   音楽の専門化ではない、牧師・神父の会議で音楽の規則が決められ、今聞くと変なものが正しいとされていたこともある。 <キーボードで和音>
   耳は時代のパラダイムに縛られる。音楽の歴史はおよそ150年単位でゆっくりと変わっている。
   1550ルネサンス→1600バロック→1750バッハ没→1900新パラダイム・現代音楽
   次は2050年頃感性の違う新様式が現れるかも???
小沼:耳はパラダイムや「慣れ」に縛られている
   自分が自由であると思ってはいけない
坂本:国や時代によって常識や暗黙の了解があるが、それが通用しない世界もある
<余談:1990年初めてNYに住んだ時のエピソード。購入した家具到着まで3ヶ月。自分で組み立てなければいけなくて、足りない部品は2ヶ月待ち。日本とのギャップに驚き>
   19世紀ヨーロッパの商人がアラブを旅行中、連れてきた楽隊にモーツァルト等を演奏させていたところ、アラブ人に「なんと単純な音楽」と大笑いされた。アラブでは1オクターブをもっと細かく割った微分音を使っている。これも二つのパラダイムの衝突の例。
小沼:1900年頃、ドビュッシー、ラヴェル、ジャズなどが台頭した。
   産業革命により楽器も変化。大きな金属が扱えるようになり、金管楽器のバルブなどの精度も大幅に向上。
   絵画の世界では印象派。サロンから外へ出るようになり、風、動きを表現するように。
坂本:中世からルネサンスにかけての変化も、楽器の改良があった。
   音楽家はガジェット好き。僕もiPadが届くのをすごく楽しみにしている(笑)
   パンフルートのような楽器を自動化してオルガンにしたのが鍵盤楽器のはじまり。
小沼:もともとヨーロッパはイスラムより遅れた文化だった。
   数量化、デジタル化(コンピュータ的発想)の登場により急速に発展
   楽器のキーボード(鍵盤)←→コンピュータのキーボード 

【西洋音楽の形成】
坂本:♪東ローマ帝国の音楽(グレゴリオ聖歌の元と言える)
    東欧、アジア的な音 ビザンティン教会では現在もこのような音楽が使われている
    ドローン(持続低音)+チャント
   ♪グレゴリオ聖歌
    単旋律→和音や対位する旋律がない 一神教を表現
    以後は音が増えていく傾向
   ♪混声合唱による聖歌
   
小沼:耳慣れている「長調」や「短調」の音ではない 
坂本:当時は五度の和音、特に「完全五度」がキリスト教の三位一体を象徴すると考えられ絶対視されていた
   数百年たって三度の和音が入ると、耳慣れた音になる
小沼:歴史は長い
   こうやっているといつまでたってもドビュッシーまで行きませんね(笑)

【西洋音楽の解体から現代へ】
坂本:僕が中学時代なぜかはまっていたのはベートーベンのピアノ協奏曲第三番
   ベートーベンの協奏曲の中でも一番「どんくさい」曲。ほらね?<弾いてみる>これが1800年頃。
   ♪ドビュッシー「雲」1900年
   この100年での変化がすごい。
   その間にワグナーがいた ヨーロッパ中が熱狂。普通ドイツを敵視するフランス人ですら熱狂
   <弾く>
   ワグナー「トリスタンとイゾルデ」前奏曲 何調かよく分からない展開
   バッハ達が築いた調性tonalityが壊されていった
   それをもっと壊したのがドビュッシー
小沼:あれ聴きませんか?ドビュッシーの「子どもの領分」から「ゴリウォーグのケークウォーク」
坂本:ちょっと待ってくださいね…
   ♪ドビュッシー「ゴリウォーグのケークウォーク」
    ワグナー的な音とジャズ(フォックストロット、ラグタイム)が共存
小沼:白人の音楽と黒人の音楽が混じりあう
   新大陸の音楽も影響を与える
坂本:アフリカではなく、アメリカからジャズが出てきた
   アメリカに連れてこられた黒人という状況だからこそ生まれた音楽
   20世紀の象徴 交通交易の発達 クラシックにも影響を与えた
小沼:非常にパロディックでもありますね>ゴリウォーグ
   ドビュッシーの和音はA.C.ジョビンにも影響を与えた
   亡くなったとき、ジョビンのピアノにはドビュッシーの楽譜が置かれていた
坂本:あとショパンもね。
   ラヴェル:ドビュッシーが目の上のたんこぶだったが、彼もすばらしい
   ♪ラヴェル「ハイドンの名によるメヌエット」
    和声の美しい小品
   ♪ビル・エヴァンス"Time Remembered"(1962)
ラヴェルの和音との親近性、親和性を感じる
    <余談:エヴァンスはヤク中で、トリオの中でメロディー楽器は彼のピアノだけなのにカウンターで寝ていて、ベースとドラムだけが演奏したりしていた。…いい話ですね?(笑)>
小沼:こういうものには「影響」を超えた、作家同士の類似性、親近性を感じる
坂本:ガーシュイン(ラプソディ・イン・ブルーetc.)はラヴェルに師事したかった
   だがラヴェルは、ガーシュインのスタイルは既に確立されているので自分に教えることはないと言った
   …これもいい話だなぁ(笑)
小沼:ラヴェルと言えば「ボレロ」
坂本:かつてブライアン・デ・パルマ監督にボレロに似た曲を作ってくれと言われた(映画ファム・ファタール)
   「似た曲」っていうのも困るんですが(苦笑)とにかく作れと。
   ♪ラヴェル自身が指揮「ボレロ」(1928)
こうして聴くと、ラヴェルは指揮者としてはあまり上手くないですね
    こちらが、デ・パルマ監督のリクエストで作り、ラヴェル財団に訴えられそうになった曲
   ♪坂本龍一「ボレリッシュ」
   <先送りしながら>ほら!こうして音数が増えていくでしょ。…ほら!(笑)
   映画フィルムのリールは1巻15分。映像はうまく繋げられるが、音はつなぎ目がでてしまうので、15分未満の曲に仕上げた。
小沼:ほんとにラヴェルになりきってますよね!!(笑)
坂本:やると言ったからにはやらないと!!(笑)
小沼:20世紀→音楽の世界ではドビュッシーなどが登場
       哲学ではベルクソンが「動き」に注目
       リュミエール兄弟が映画を発明
   そのパラダイムの中に今も我々はいる。

【事前回収された質問より】
Q.「スコラ」一巻一巻の曲はどのように決められているのですか?
小沼:坂本さんが決めて、僕と浅田さんがちょっかいを出すという形
坂本:僕もクラシックの知識は70年代頃までで止まっているので勉強しなおしている
小沼:僕もこの機会にベートーヴェンを聴きなおしたりして勉強している
坂本:平均的な全集にするつもりはないので、普通だったら絶対にはずさない物が入っていなかったりする
小沼:逆に、坂本龍一という音楽家をスコラから知ることができる
   この仕事を通して坂本さんの楽譜に対する厳密さを実感した
坂本:好きな演奏でもミスタッチがあると入れられなかったりする
小沼:間違っていても我々は気にならなかったりするけれど、坂本さんはやっぱり「作曲家」なんだなと思う
坂本:自分で作った曲を自分で間違えたりもしますが(笑)
   自分が勉強していた頃は、バッハより前の音楽を聴くことがほとんどできなかった 
   今は違う。ごく普通の人が「私は中世以前の音楽しか聴きませんね。」みたいなことがあり得る(笑)
小沼:このように、日々勉強しながら進めている
坂本:大変な作業なので年3巻しか出せない
   全30巻もあるので、途中で死んだら誰か遺志をついでやってくれるよね?
小沼:そんなぁ~(苦笑) 

**********************************************************************

小中高時代、音楽の授業の中でも「音楽史」の枠が面白かったという記憶はほとんどありません(先生方ごめんなさいm(_ _)m)。けれども、様々なエピソードや鋭い洞察を交えた今回の講座は本当に楽しく、90分があっという間に過ぎていきました。個人的には音楽のパラダイムシフトの話が一番興味をそそられましたね。このサイクルで変化が起きるなら、次は2050年頃。その頃自分が生きているか、生きていたとしても音楽を聴いて楽しめる状態にあるかは全く分かりませんが、どんな音楽が出てくるのか想像するだけでもワクワクしてきます。そして、大好きな「ゴリウォーグのケークウォーク」がかかったので、久しぶりにピアノが弾きたくなったのも嬉しい刺激。土曜日夜にはNHKの「schola 坂本龍一 音楽の学校」もありますし、まだまだ音楽好奇心をワクワクさせてくれそうです♪

そういえば、月曜日にはこういうUSTもありますね。
時間的に私は見られないので残念!><

坂本龍一×湯山玲子「男女公論 -番外編 ~教授と玲子のお茶会~」
on Ustream 実況生中継!

commmonsmart人気コンテンツ「男女公論」が遂にUstreamに登場します!
坂本龍一と湯山玲子がホンネ満載のトークでお送りするドキドキの1時間。
お2人からどんな話が飛び出すか、是非ライブでチェックしてください!

放送日時:2010年4月26日(月)17:15~18:15
(*生放送のため時間が前後する可能性がございます。)

ustream url: http://ustre.am/gqyy
twitter: http://twitter.com/commmons
ハッシュタグ: #danjokoron



commmonsオフィシャル
commmons scholaオフィシャル
schola 坂本龍一 音楽の学校(NHK)
2010年04月24日 | Comments(2) | 音楽[S]
コメント
No title
レポートありがとうございます。
こんなにきちんとノート取られて、skysongさん優秀な生徒さんです!笑。
文面からだけでも、お二人の話から色んな事が吸収出来た講座だったことが伺えますね。
是非、シリーズ化して続けて頂きたい企画ですね。
MORI URL 2010年04月26日 15:52:05 編集
No title
>MORIさん

こういう講義モノや会議の議事録とか、鬼のように細かく取りたくなってしまう性分なんですよ~(^^;)

本当にシリーズ化して頂きたいです。教育テレビの「スコラ:音楽の学校」と併せて見ると、さらに深まる感じです。
skysong URL 2010年04月26日 20:17:05 編集

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