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映画「マリー・アントワネット」

MarieAntoinette

昨年から友人と楽しみにしていた「マリー・アントワネット」を観てきました。かなり賛否が分かれる評判を聞いていたので、自分がどういう感想を持つか、期待半分、不安半分で。

一番最初に読んだレビューは翻訳家の岡山徹さんが英語学習誌『週間ST』に書かれたもので、「しかし、マリーの退屈をリアルに描けば描くほど、映画が退屈になるというジレンマに、監督は気付いていないのだろうか」という指摘が印象的でした。
そうか、退屈なんだ。映像を淡々と繋ぎ合わせた、ストーリー性を否定した映画なんだろうか?そんな想像をしながら映画館に赴いたのですが。

……え?これが退屈?面白いじゃん!
ヒラヒラ、こてこての衣装や調度への興味は薄いのですが、自分でも驚くほどマリーに感情移入してしまって、何度も泣きそうになりましたよ。「普通の人間、女性としてのマリー・アントワネットを描きたかった」という主旨のことをソフィア・コッポラ監督が言っていましたが、まさに。

周囲から常に好奇の目にさらされる「異物」として、単身、全く未知の環境に入っていかざるを得ない状況の、めまいすら伴う緊張感、閉塞感。想像ですが、フランシス・コッポラという有名な父を持つソフィアも、行く先々で突き刺さるような好奇の視線にさらされたことが何度もあったのではないでしょうか。ヴェルサイユ宮殿にマリーが入っていくシーンの、グラグラする圧迫感に満ちた映像を見ていて、そんなことを思いました。

そして、世継ぎを生まなければならないプレッシャーがかかる中、どうしてもうまくいかないことの苦しみ。私も最初の子どもをなかなか授かることができなかったので、月を重ねるごとに澱のように焦燥と不安がじりじりと溜まっていく、あの感覚を味わったことがあります。周囲からの圧力が少ない一般庶民でも、かなり精神的に「来る」ものがあるんですね。自分よりも後に結婚した人たちの所に先にベビーが生まれるたびに、笑顔で「おめでとう」と言い、頭でもめでたいと思っているのだけれども、ふっと一人になった時に、がっくりと全身の力が抜けてしまう、あのどうしようもない感じ。そして、それを経て出産できたときの、何ともいえない喜び。殿方には分かりにくい心理なのかもしれないけれど、もうビシビシ感情移入してしまって、退屈しているヒマがなかったです(笑)。

このような自分ひとりの「努力」だけではどうにもならない状況に追い込まれた時、「きゃーっ!このドレス、可愛い~♪」「きゃーっ!このケーキおいしい~♪」「きゃーっ!パーティーよっ♪」に逃避してしまう気持ちも、すごくよく分かってしまうのですね。(苦笑)

言わばこれは、見知らぬ土地に嫁いでしまい、不妊に悩むフツーの主婦が現実逃避でブランド買い&高級レストランのランチめぐり&エステ通いへと突っ走る設定にしても成り立ちそうな物語なんです。

ただ、フツーの主婦だったら家計が破綻してもその一家が困るだけですが、一国の女王がそれをやってしまったら、その罪ははてしなく重い。不幸にも、夫も王の資質をこれっぽっちも持ち合わせていなかったし。ヴェルサイユに押し寄せた怒れる市民たちにバルコニーでお辞儀をした瞬間、初めてアントワネットの顔が「楽しいことが大好きなフツーの女の子」から「女王」になりました。頼りないルイ16世も、事がここまで深刻になって、初めて「王」らしく引き締まった表情を(まだまだ頼りないけど)見せるのです。けれども、もう決定的に手遅れ。その事実の重みと、二人の「可愛らしい」とまで言いたくなるほどのちっぽけさ、フツーさが切なかったです。

とかく話題の音楽ですが、ごくごく自然にポップミュージックが使われていたという印象を受けました。その時代らしい音楽でいくか、斬新な「表現」として気張ってポップミュージックを使うのか、どちらかを選ばなきゃならないなんてナンセンス。それぞれのシーンの気分にぴったりくる音楽を選んだら、たまたまこうなったのよ。そんな感じ。
それもアリだと思いました。特別新鮮でもないけれど、違和感もなく見て、聞くことができましたもの。
マリー・アントワネット マリー・アントワネット
サントラ、スージー&ザ・バンシーズ 他 (2006/12/13)
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一本の映画としても私には面白かったのですが、この映画に対する評価の分かれようも非常に面白いと思っています。文化厚生大臣の失言に対する世間の(特に男女間の)温度差の違いにも似ているような。なんだか、リトマス試験紙のような映画ですね。
(どういう見方が「正しい」なんてことを言うつもりはありませんが。)
さて、あなたは…どっち?(笑)

☆蛇足ですが、マリーの後見人メルシー伯爵(スティーヴ・クーガン)がアップで映る度に、頭が「24アワー・パーティー・ピープル」(マンチェスターの音楽シーンを描いた映画)に飛びそうになって困りました~(笑)。
SteveCoogan


2007年02月02日 | Comments(7) | Trackback(1) | 映画
コメント
こんにちは。

私もこの映画肯定派です。
よそのブログに同じようなコメントつけたのですが、”マリー・アントワネット”というお題で人間模様や革命やらを描かずに映画を作ってしまおうというのはある意味すごいですよ。
「もうちょっと革命をはさみましょう」とか「民衆の苦悩を描きましょう」とか周りからいろいろ意見はあったと思うんですけどね。
さすがフランシス・コッポラの娘です。
るき URL 2007年02月02日 14:09:19 編集
革命の一部としてではなく、
人間としてのマリーアントワネットに焦点をあわせて
描いた映画なんですね。映像もすごく素敵なんだろうな。
観てみたいです。テストが終わったら行ってきます♪
catcans URL 2007年02月02日 14:39:45 編集
>るきさん
 >、”マリー・アントワネット”というお題で人間模様や革命やらを描かずに映画を作ってしまおうというのはある意味すごいですよ。

たしかに。条件反射的に大河ドラマ的に仕立てたくなってしまいそうな題材ですものね。
題材の扱い方もさることながら、建物や衣装なんかはものすごい豪華で緻密なのに、あちこち「ヴァージン・スーサイズ」なみにラフでアバウトな部分があるアンバランスさにもウケました。
それって、すごい贅沢なことじゃないかと。

ソフィア・コッポラ、超マイペースな方とお見受けします(笑)。

>catcansさん
お久しぶりです~!!
catさんどうしてるかな?って話していたんですよ。
映像もキレイでしたよ~。
私は宝塚のベルバラみたいに濃厚なものには後ずさりしてしまうのですが、ソフィアの映像はふんわり淡ーいパステルカラー中心で、目に優しい感じでした(笑)。
テストが終わられたら、ぜひ。
また美術展などにも行きましょうね☆
skysong URL 2007年02月02日 16:09:14 編集
あ、ご覧になったんですね。こちらでもCMでNOが流れるたんびにどきどきしてました。S.クーガン出てたのは知りませんでした、ますます楽しみ。24HOURPEOPLEでS.クーガンといえばM.ウィンターボトム(この人とS.コッポラとW.ヴェンダースとJ.ジャームッシュはサウンドトラック四天王だと思います)のA cock and bull storyとこれのDVDを併せ買いしてcostume play film祭りしようかしら(笑)
Madorena URL 2007年02月05日 02:39:47 編集
>Madorenaさん
英国でのリアクションがどうなのか、気になります。
「サウンドトラック四天王」って、イイですね。(笑)
M.ゴンドリーやイヴァン・アタル(まだ映画2本しか撮ってないけど)あたりも入れてあげたいかも。
とすると、いずれ七福神に?(爆)

costume play flim祭りはご主人と?
ぜひフォトを送ってください!!(^-^)/~
skysong URL 2007年02月05日 12:21:56 編集
UKでのcriticのリアクションは、5starで3.5といったところで、淡々と受け止められた風です。「フランス話だし」でまず受け流されちゃいますし(これがエリザベスやヘンリーだったら大騒ぎでしょうけど)。カワイイ好きさんにはやはり受けていたようです。
M.ゴンドリーさんとI.アタルさんは存じませんでした、七福神になったら楽しそう♪あと一人探さなくっちゃ。ムーランルージュの監督さん?S.リー?(JBの伝記映画はみたいなあ)
相方は先日『ルードヴィヒ』を見せたら寝てたので、(『アマデウス』がいけたのでいけるかと…)2人で祭りは難しそうです。それにあんな華麗なcostumeもってませんよぉ(笑)2人とも似合わなさすぎ。あっちは、ウィグはフィットしやすいですけどね!
Madorena URL 2007年02月06日 04:17:44 編集
>Madorenaさん
ウィッグがフィットしやすいって……
朝から笑わせていただきました。
(面識ないのに、ご主人のイメージがすっかり 笑)
「アマデウス」はテンポがよくてドラマティックですものね。
では「マリーアントワネット」はご夫人連で鑑賞でしょうか。

英国のリアクションはそんな感じなんですね。YouTubeにアップされていたソフィア監督インタビュー映像で、英国の映画評論家(?)が「カンヌでフランス人がフランス語でブーイングしてた。『ル・ブー!』ってさ」と言ってました(笑)。
ドーバー海峡のこちらとあちらでは、だいぶ温度差がありそうですね。
skysong URL 2007年02月06日 09:10:28 編集

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めまい (映画)1958年10月7日 | 上映時間 = 128分| 製作国 = アメリカ| 言語 = 英語| 制作費 = $2,479,000| 興行収入 = | 前作 = | 次作 = | allcinema_id = 23363| kinejun_id =| amg_id =| imdb_id
映画の缶詰 2007年02月24日 02:12:46
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