The Velvet Underground The Velvet Underground (1996/05/07) Verve この商品の詳細を見る(amazon) |
キャンディは言うんだ
私は自分の体が嫌になったの
この世界で、体が要求する全てのことも
青い鳥たちが、肩越しに飛んで行くのを眺めるわ
彼らが私を通り過ぎるのを
もっと年を重ねたら
私は何を見るのかしら
自分から歩み去ることができたなら
何を見ると思う?
(Lyrics by Lou Reed 部分意訳:skysong)
私は長いこと、これは思春期の少女の、自分の身体と、それが要求してくるもの、されるもの(生理的に、あるいは社会的に)に対する嫌悪感と戸惑いを歌った曲なのかと勝手に思っていました。でも、この歌詞のCandyは、ウォーホルの映画などに出演していた伝説的ドラッグ・クイーンCandy Darlingなんですね。キャンディの肉体に対する苦悩は性的倒錯を抱えていたことなのだろうけれども、そういう葛藤がなくても、私などはちょっと体調が悪かったりするだけで、自分の体と付き合うのに疲れてしまうことがあります。
だいたい体と精神は、いつもどこかアンバランスで、頭ばっかり「こうありたい」とか「あんなこともこんなこともしたい」と先走っても、体がついていかないことがしばしば。宅ヨーガを始めて1ヶ月(きっかけはこのエントリに書きました)。ヨーガとはもともと「くびきをつける」という意味で、馬を御するように心身を制御することだそうです。少しずつ、ヨーガの呼吸やポーズを通して体の声に耳を傾けられるようになっていきたいものですが、まだいきなり熱を出して寝込んだり、耐え難い頭痛でのたうち回ったり、体と上手にお付き合いできているとは言えません。それでも、ゆっくりと呼吸をしながらポーズを取っていると、以前は固かった関節が突然すうっと開いていき「お?」と驚く瞬間があったりして。頭で「自分の体はこうだ」と決め付けたり、ねじ伏せるように制御するのではなく、体の方が密やかに語りかけてきていることに気付くこともある、今日この頃です。
そんなこんなで体と心の対話をヨーガで探る毎日を送っていても、体と心の悲しい乖離を甘美なメロディで包み込んだ、この曲のデカダンスを愛さずにはいられない。根っからの健康・健全人間にはなれないようです(笑)。肩越しに青い鳥が飛んでいくのをただ眺めるしかない時だって、やはりささやかな生の一断章なのですから。
YouTubeには残念ながらヴエルヴェッツやルー・リードによるものがなくて、カヴァーばかりなのですが、Beth Gibbonsバージョンで。
Beth Gibbons & Rustin Man / Candy Says